スランプ』の連載と平行して描いた読み切り作品『騎竜少年(ドラゴンボーイ)』、『トンプー大冒険』(両作品とも『鳥山明○作劇場VOL.2』に収録)を基に、『ドラゴンボール』のネタを固めていった。 プロット段階においては『西遊記』の要素も取り入れると共に、「ボールを集める」というアイデアは『南総里見八犬伝』から 431キロバイト (52,387 語) - 2021年6月21日 (月) 13:17 |
ヤフーニュース6/23(水) 9:00柳田理科雄 | 空想科学研究所主任研究員
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20210623-00244303/
◆気円斬とはどんな技?
クリリンが気円斬を初披露したのは、ベジータとナッパに立ち向かったときだった。そのシーンは、マンガでは次のように描写されていた。
空に向かって右手を突き上げ「はあああ~!!!!」と気合を込めるクリリン。右手の上に輝く円盤が現れる。直径は1.5mほどもあるだろうか。
クリリンが「気円斬!!」と唱え、「とうっ!!!!!」と腕を前方に振ると、気円斬はナッパ目がけて飛んでいく。
ナッパは「くだらん技だ!」と笑って迎え撃とうとするが、ベジータが「ナッパ よけろーっ!!!」と叫んだ。
ナッパがベジータを振り返った瞬間、気円斬はナッパの顔をかすめ、さらに後方の大きな岩山をザンッと切断して飛び去った。ナッパの顔には、一筋の傷が残されて、血が流れた……。
おお、すごい威力じゃないか、気円斬!
『ドラゴンボール』の技の多くは「気」から生まれるから、気円斬もおそらく「気」を猛スピードで回転させて、円盤型にする技なのだろう。
科学では「気」の定義を定めていないので、原理はわからない。ただ、気の回転によって、岩山を切断するほどのエネルギーを生んでいることは間違いなさそうだ。
◆クルマ1万2千台が衝突!?
そのエネルギーとは、具体的にどれほどか?
注目したいのは、気円斬で切られた岩山が飛ばされたことだ。
コマの描写から、岩山の切られた部分は直径15m、高さ12mほどと思われる。その場合、推定重量は6千t。これが目測8mほども飛び上がっており、このとき気円斬が岩山に与えたエネルギーを計算すると、時速100kmで走る乗用車が1200台ぶつかるのと同じだ。
しかも、これが気円斬の持つエネルギーのすべてではない。全エネルギーが岩山の切断に使われたら、気円斬はそこで消滅するだろう。だが、気円斬はその後も勢いを失う様子はなく、そのままシュルシュル飛び去っていった。
仮に切断でエネルギーの1割を失ったとしたら、気円斬は時速100kmの乗用車1万2千台のエネルギーを持つことになる。1万2千台というのは、全長4mの車が車間距離3mで並ぶと、東名高速が東京から御殿場まで埋まるほどの台数。それが一挙に時速100kmで突っ込んでくるほどのエネルギーということです。すごい!
◆それは気円斬の弱点か?
だが、筆者は「気円斬には大きな弱点があるのでは……」とニラんでいる。
それはスピード。クリリンが気円斬を放ってから、ナッパが「くだらん技だ!」と言ったり、ベジータが「ナッパ よけろーっ!!!」と仲間に注意を促したりしているところから考えると、気円斬はかなりゆっくり飛んでくる様子なのだ。
時間が測定できるアニメ版で同じシーンを確認すると、クリリンが気円斬を投げてから、ナッパの頬をかすめるまで20秒かかっている。このときナッパまでの距離は目測50mほどだから、つまり50m飛ぶのに20秒。
これは遅い! 小学1年生男子の50m走のタイムが平均11.51秒だから、その半分くらい。具体的には、時速9kmである。
このノロさでは、避けるのは簡単……と思ったのだが、いや待てよ。気円斬の恐ろしさは、別のところにあるのではないか。
前述のとおり、6千tもある岩山を切断したぐらいでは、気円斬はほとんどエネルギーを失わない。
すると、その後もスパスパいろいろなものを切断しながら、時速9kmで飛び続けるのではなかろうか。しかも高速回転しているだけに、その軌道はフリスビーと同じで、一直線とは限らない……!
これは大変だ!
気円斬は、行く手にあるものを、木だろうと家だろうとスパスパと切ってしまうに違いない。
ってことは、いまこの瞬間にも、あなたや私がいる部屋の壁を切り裂いて、気円斬が現れるかも! エレベーターに乗っていると、気円斬が不意に現れて、ゴンドラを吊ったロープを切ってしまうかも!
クリリンは、この技を何発繰り出したのだろうか。それはマンガには描かれていないが、気円斬を体得するまでに、何度も何度も練習したことは確かだろう。
そのとき放った大量の気円斬はどうなったのか? ひょっとしたら、いまもエネルギーを失わず、いろいろなものを切りながら、時速9kmで飛び続けているのでは……?
うーむ。想像すればするほどオソロシイ気円斬である。こんなキケンな技を編み出したクリリンは、やっぱりすごい地球人だ。
(一部略)